コラム

2024/09/21 コラム

賞与の減額支給は違法となるか?

1. 賞与とは?
まず、賞与の基本的な仕組みや種類について解説します。

(1) 賞与とは
賞与は、毎月の給与とは別に労働者に支給される特別な報酬です。以下の条件を満たすものが賞与に該当します。

定期または臨時に支給される
労働者の業績や企業の経営状況に応じて支給される
金額が事前に確定していない
(2) 賞与の主な種類
賞与には以下の3種類があります。

基本給連動型賞与
基本給を基準に賞与の金額が決まるもの。たとえば「基本給の○か月分」という形で支給される場合、これに該当します。

業績連動型賞与
企業の業績に基づいて賞与額が決まるもの。業績が好調であれば賞与額が増加し、不調なら減少します。

決算賞与
決算期に業績に応じて臨時に支給される賞与。業績連動型に似ていますが、利益還元や法人税節税の目的もあります。

(3) 賞与の支払義務
賞与は、給与と異なり法律で支給義務が定められていません。企業は賞与を支給するか否か、またその基準を独自に決めることができます。

ただし、就業規則に賞与支給が定められている場合、その基準に従う義務が生じます。一方的な賞与の減額や不支給は、違法となるリスクがあります。

(4) 賞与の支給対象者
賞与の支給対象者も企業が自由に決めることが可能です。正社員のみに支給し、非正規労働者には支給しないことも許容されます。ただし、同一労働同一賃金に反する場合、違法となる可能性があります。

2. 賞与の有無による企業のメリット・デメリット
賞与を支給するかどうかによる企業側の利点と問題点を見ていきます。

(1) 賞与を支給する場合
メリット
賞与は労働者のモチベーション向上につながります。特に業績連動型賞与では、労働者の貢献が直接賞与額に反映され、会社の業績向上にも寄与する可能性があります。また、決算賞与は法人税の節税効果も期待できます。

デメリット
賞与を支給することで、企業の手元資金が減少し、業績次第では経営に悪影響を及ぼすことがあります。特に業績連動型賞与の場合、業績不振時に賞与を支給しないと労働者のモチベーション低下が起こり得ます。

(2) 賞与を支給しない場合
メリット
賞与を支給しない企業では、基本給を高めに設定していることが多く、安定した給与を労働者に提供できます。また、賞与支給計算の手間を省け、ボーナス後の離職リスクも回避できます。

デメリット
賞与がないため、労働者のモチベーションが下がる可能性があります。また、優秀な人材を引き付けにくいという問題も考えられます。

3. 賞与を支給するための算定基準
賞与の算定基準は企業ごとに異なります。代表的な基準を紹介します。

基本給に支給月数を掛けて算定
基本給と支給月数を掛け合わせて賞与を決定する方法です。計算が明確ですが、労働者の個別貢献が反映されにくいです。

等級・役職に応じた一律支給
役職や等級ごとに賞与額を決定します。「部長職は一律○万円」といった形で支給されることが多いです。

個人の業績評価を加味して算定
労働者の業績評価を加味して賞与を決める方法。個々の貢献度が賞与に反映されるため、モチベーション向上が期待できます。

企業の利益分配方式
業績に応じて賞与額を決定する「業績連動型」の一種。業績不安定な中小企業でよく見られます。

勤怠実績を反映
勤怠実績に基づいて賞与を決定します。ただし、有給休暇や育児・介護休業は控除対象になりません。

4. 賞与の減額・不支給が違法となるケース
賞与の支給基準が就業規則に定められている場合、企業はその基準に従う義務があります。正当な理由がなく賞与を減額・不支給にすると違法となる可能性が高いです。

5. 業績悪化による賞与減額の合法・違法
企業が業績悪化を理由に賞与を減額する場合の合法性について解説します。

(1) 合法とされるケース
就業規則に「業績に応じて賞与支給を行わないことがある」と明記されている場合、減額は合法とされる可能性が高いです。

(2) 違法とされるケース
就業規則にそのような留保がない場合、企業が一方的に賞与を減額することは違法となる可能性があります。

6. 賞与からの社会保険料・所得税控除
なお、賞与支給時には社会保険料や所得税が控除されます。主な控除対象は次の通りです。

健康保険料
厚生年金保険料
雇用保険料
介護保険料
このように、賞与の有無やその支給方法には企業と労働者の双方にメリット・デメリットがあります。

就業規則の作成、賞与の支給などの労働問題についてのご相談は、当弁護士事務所ご連絡下さい

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