コラム

2024/09/20 コラム

フランチャイズ契約について

フランチャイズ事業は、中小小売商業振興法における「特定連鎖化事業」に該当するため、フランチャイズ本部については中小小売商業振興法の規制を受けることになります。

なお、中小小売商業振興法とは、中小小売商業の振興と国民経済の健全の発展を目的として、昭和48年に制定・施行された法律です。

中小小売商業振興法では、以下の2つ条件を満たす事業を「連鎖化事業」として定義しています。

 ①主として中小小売商業者に対して、定型的な約款による契約に基づき、継続的に商品の販売または販売のあっせんをす  る事業であること

 ②経営に関する指導を行う事業であること

 

そして、連鎖化事業にあたるもののうち、以下の2つの条件を満たすものを「特定連鎖化事業」として定義しています。

 ③約款で加盟店に特定の商標や商号その他の表示を使用させる旨の定めがあること

 ④約款で加盟店から加盟金、保証金などの金銭を徴収する旨の定めがあること

 

法律の定義からは何が「特定連鎖化事業」にあたるかがわかりづらいですが、飲食店や小売店のフランチャイズ事業で、本部が加盟店に商品を卸したり、仕入れ先を指定したりする場合には、特定連鎖化事業に該当するといえます。

他方、美容院などのサービス業のフランチャイズでは、そもそも「連鎖化事業」に該当しないため、中小小売商業振興法の適用対象外となります。

 

(1)中小小売商業振興法が適用されるフランチャイズ事業の場合、フランチャイズ本部事業者は、加盟店に対して、フランチャイズ契約締結時に法定開示書面を交付して、その内容について説明することが義務付けられています(中小小売商業振興法11条)。

中小小売商業振興法で書面開示および説明が義務付けられている事項としては、以下のものが挙げられます。

  • ① 本部事業者の名称および住所、従業員の数、役員の役職名および氏名
  • ② 本部事業者の資本の額または出資の総額および主要株主の氏名または名称、他に事業を行っているときはその種類
  • ③ 子会社の名称および事業の種類
  • ④ 本部事業者の直近3事業年度の貸借対照表および損益計算書
  • ⑤ 特定連鎖化事業の開始時期
  • ⑥ 直近の3事業年度における加盟者の店舗数の推移
  • ⑦ 直近の5事業年度において、フランチャイズ契約に関する訴訟件数
  • ⑧ 営業時間、営業日および休業日
  • ⑨ 本部事業者が加盟者の店舗の周辺の地域に同一または類似の店舗を営業または他人に営業させる旨の規定の有無およびその内容
  • ⑩ 契約期間中、契約終了後、他の特定連鎖化事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が禁止または制限される規定の有無およびその内容
  • ⑪ 契約期間中、契約終了後、当該特定連鎖化事業について知り得た情報の開示を禁止または制限する規定の有無およびその内容
  • ⑫ 加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項
  • ⑬ 加盟者から定期的に売上金の全部または一部を送金させる場合はその時期および方法
  • ⑭ 加盟者に対する金銭の貸し付けまたは貸し付けのあっせんを行う場合はそれに係る利率または算定方法およびその他の条件
  • ⑮ 加盟者との一定期間の取引より生じる債権債務の相殺で発生する残額の全部または一部に対して利率を付する場合は、利息に係る利率または算定方法その他条件
  • ⑯ 加盟者に対する特別義務
  • ⑰ 契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容
  • ⑱ 加盟に際し徴収する金銭に関する事項
  • ⑲ 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
  • ⑳ 経営指導に関する事項
  • ㉑ 使用される商標、商号その他の表示
  • ㉒ 契約の期間ならびに契約の更新および解除に関する事項
  • (2)義務に違反した場合のペナルティー

    中小小売商業振興法で義務付けられている書面開示および説明を怠ったフランチャイズ本部事業者に対しては、主務大臣による勧告が行われます。また、フランチャイズ本部事業者が勧告に従わなかった場合には、その事実が公表されるといったペナルティーが課されます。

    フランチャイズに加盟しようとする事業者としては、当然、フランチャイズシステムに参加して利益を上げることが目的のため、法定開示書面はそのような判断をするにあたって重要な書面になります。中小小売商業振興法は、フランチャイズ本部事業者に対して、書面開示を義務付け、不開示に対してはペナルティーを課していますので、フランチャイズへの加盟者や加盟希望者を保護する法律であるといえます。

    フランチャイズ本部事業者の立場での注意点は、以下の点になります。

    ① 事業内容を踏まえた法定開示書面を作成す
    中小小売商業振興法により開示が義務付けられている法定開示書面については、(一般社団法人)日本フランチャイズチェーン協会のウェブサイト上に掲載されていますので、それを参考に作成することもできます。

    その際には、他社の法定開示書面をほぼそのまま利用するのではなく、自社の事業内容に即して作成することが大切です。内容に不備があった場合には、将来的に加盟店との間でトラブルになるおそれがありますので注意が必要です。

    ② 加盟店に内容を説明し、確認の署名押印をもらう
  • 法定開示書面の交付および説明にあたっては、後日、加盟店から「そんな説明は受けていない」などと言われるトラブルが生じることもあります。
    加盟店に対して、法定開示書面を交付する際には、少なくとも契約締結の1週間前には開示し、内容を検討するだけの十分な時間を与える必要があります。また、契約締結時には、フランチャイズ契約書への署名押印だけでなく、法定開示書面の交付および説明を受けたことを明らかにするために、こちらについても加盟店から署名押印を受けておくと安心です。
    フランチャイズ本部事業者にとっては、加盟店との間のトラブルを防止するための重要な書類になりますので、弁護士に相談して内容をチェックしてもらうことが大切です。時代の変化とともに契約内容は変わっていきますので、定期的に弁護士にチェックしてもらうためにも、当弁護士事務所弁護士への相談をお勧めします。

CONTACTお問い合わせ

電話でのお問い合わせ

011-280-8888

© みずほ綜合法律事務所