2024/09/20 コラム
独占禁止法について
独占禁止法は、消費者の利益を図ることを目的として、事業者間の公正・自由な競争を阻害する行為や状態を禁止しています。
一部の事業者による市場の独占や寡占、他の事業者を締め出す行為などがなされると、公正・自由な競争は阻害され、事業者による品質向上の取組はストップし、価格が不当に高く維持されかねません。
独占禁止法はそのために下記の制限を設けました。
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「私的独占」の禁止 他の事業者を市場から排除し、または支配することで、競争を実質的に制限する行為です(独占禁止法第2条第5項)。
<排除型私的独占の例>- 不当な低価格販売
原価割れで販売すること - 排他的取引
取引相手に対して、競合他社との取引を禁止すること - 抱き合わせ販売
需要の高い主力商品を販売する際、別の商品を一緒に購入させること - 供給拒絶、差別的取扱い
合理的な範囲を超えて、特定の事業者に対する商品の供給を拒絶すること
- 株式取得などを通じて、競合他社の支配権を獲得するこ
- 私的独占に当たる行為は、一律で禁止されています(同法第3条)
- 不当な低価格販売
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不当な取引制限|カルテルと談合の禁止 「不当な取引制限」とは、複数の事業者が話し合って、商品やサービスの供給量や価格などを決めてしまう行為です(独占禁止法第2条第6項)。
- カルテル
商品やサービスの価格・販売数量・生産数量などを、複数の事業者が話し合って決めること - 入札談合
公共工事や公共調達などの入札に当たり、複数の事業者が話し合って、受注事業者や受注金額を事前に決めること
私的独占と同じく、不当な取引制限も一律で禁止されています(同法第3条)。
- カルテル
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不当な競争制限
複数の事業者から成る事業者団体が主導して、不当な競争の制限が行われるケースも想定されます。
そのため独占禁止法では、事業者団体による以下の行為が禁止されています(同法第8条)。- 一定の取引分野における競争の実質的な制限
- 不当な取引制限または不公正な取引方法を内容とする、国際的協定または国際的契約の締結
- 一定の事業分野における、現在または将来の事業者数の制限
- 構成事業者の機能または活動の不当な制限
- 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせること
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企業結合|実質的に判断 企業結合とは、株式保有や合併などを通じて、複数の事業者が結合することを意味します。
「M&A」などと呼ばれることもあります。企業結合自体は有益なケースもありますが、事業支配力の過度な集中を招いたり、競争を実質的に制限する結果を招いたりする企業結合も存在するのが実情です。
そこで独占禁止法では、企業結合を一律に禁止するのではなく、実質的に公正・自由な競争を阻害し得る企業結合のみを禁止しています(同法第9条以下)。 - 独占的状態|市場構造に注目
「独占的状態」とは、一定規模以上の市場において、独占企業または寡占企業が過大な利益を得ており、かつその独占・寡占状態を打破することが難しい状態を意味します。
具体的には、以下の①~⑤の要件をいずれも満たす場合、独占的状態に該当します。① 市場規模が年間1000億円超であること
② 1社の市場シェアが50%超、または2社合計の市場シェアが75%超であること
③ 新規参入を著しく困難にする事情があること
④ 需給バランスなどに照らして、相当の期間商品・サービスの価格上昇が著しく、または低下が僅少であること
⑤ 以下のいずれかに該当すること
- 特定の事業者が、標準的な利益率を著しく超える過大な利益を得ていること
- 特定の事業者が、標準的な金額よりも著しく過大な販売費・一般管理費を支出していること
独占的状態にある市場には構造上の問題があり、自発的な改善は期待できないため、公正取引委員会による競争回復措置命令の対象とされています(同法第8条の4)。
6 不公正な取引方法|公正な競争を阻害し得る行為「不公正な取引方法」は、事業者間の公正な競争を阻害し得る行為です。
以下に挙げる行為が、不公正な取引方法に該当します(独占禁止法第2条第9項)。- 共同の取引拒絶
- その他の取引拒絶
- 差別対価
- 取引条件等の差別取扱い
- 事業者団体における差別取扱い等
- 不当廉売
- 不当高価購入
- ぎまん的顧客誘引
- 不当な利益による顧客誘引
- 抱き合わせ販売等
- 排他条件付取引
- 再販売価格の拘束など、拘束条件付取引
- 取引の相手方の役員選任への不当干渉
- 競争者に対する取引妨害
- 競争会社に対する内部干渉
- 優越的地位の濫用
(参考:「不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)」(公正取引委員会))
事業者が不公正な取引方法を用いることは、一律禁止です(同法第19条)。独占禁止法に違反した場合は、刑事罰や過料、さらに公正取引委員会による課徴金納付命令を受ける可能性、排除措置命令、競争回復措置命令、課徴金納付命令など、かなり危険かつ高額な処罰があるため、企業ではこれに該当しないよう十分に注意しましょう。